奈良・平城遷都1300年&ハノイ建都1000年を祝しての記念事業(2010年夏)
この秋、平城遷都1300年、ハノイ建都1000年をお祝いし、奈良の薬師寺とハノイ文廟・ベトナム国立美術博物館で「型染めで紡ぐ悠久の都‐奈良・ハノイ 鳥羽美花展」が開催されます。この奈良とハノイは不思議な絆で結ばれています。「天の原ふリさけ見れば春日なる御笠の山に出でし月かも」と奈良をしのんで詠んだ阿部仲麻呂、その仲麻呂は今のハノイに6年もの間、滞在したと伝えられています。また、海のシルクロ-ドとして栄えたベトナム中部のホイアンには17世紀前半、日本人町が形成され、今でも往事の姿を色濃く残しています。ハノイにベトナム最初の王朝が成立したのが1010年、本年はハノイ建都1000年を迎え、平城遷都1300年と重なり、不思議な巡りあわせを感じさせます。染色作家、鳥羽美花は、1990年代半ばから、近代化により大きく変化するベトナム、そのなかで消失していく懐かしい風景を追い求め、日本の至宝といえる「型染」技法を駆使し、数々の大作を制作してきました。その一連の作品を集めた個展は日越外交関係設立30周年などを記念して、ハノイや古都フ工の王宮でも開催され、多くのベトナムの人々にも親しまれ、新たな交流が生まれました。
「型染」は、米作地帯日本ならではの米糊を利用した染色技法で、海を一度も渡ることなく日本の染色文化を彩ってきました。歴史は古く、正倉院宝物の中に型紙を使用した遺品があり、現存する糊防染による最古の遺品は春日大社の「義経の籠手(こて)」とされているように奈良と深く係わりがあります。鳥羽美花は、この日本古来の伝統技法を生かしつつ、大胆な写生と構想力で新たな美の世界、鳥羽美花アート・ワールドを切り開いてきました。
2010年の鳥羽美花展では、ベトナムの変化する光景を描いた一連の作品と共に、型染の故郷、奈良の都に立ち返り、奈良を描いた作品「凛一西の京より」も展示します。奈良では薬師寺において、そしてベトナムでは、作品を生み出す豊饒な土地、古よりの心の交流が後世に繋がるよう、 ハノイでベトナム最古の大学である文廟とベトナム国立美術博物館において鳥羽美花展を開催します。特に薬師寺では山田管主の格別のご好意によリ、東院堂の聖観世音菩薩立像(国宝)のお隣に作品が展示され、美しいハーモニーが奏でられます。
今日、日本とベトナムとの関係は軽済面を中心に目覚しい発展を遂げてきていますが、本展覧会が、越し方を振り返り、未来に向かって日越関係の展望を拓き、両国の友好関係の更なる発展に寄与することを願っています。2009年6月、ズン・ベトナム首相が訪日された際、鳥羽美花からズン首相にこの作品展の計画を説明しましたところ、ズン首相も大いに関心を示され、全面的な協力を約束してくださいました。皆様のご協力をお願いします。
鳥羽美花型染展実行委員会